「アンナはすべての社会と人間の辛辣を感じて、死ぬんだよ。 爆走する列車にみずからの身を投じて、死ぬんだね。 女が愛や恋で死ぬなんて、尋常じゃない。 それにくらべたら男なんて弱いもんだよ。 好きな女に振られたくらいで、すぐに苦しい、辛い、死ぬ死ぬと言い出すが、女はそういう心の深みを体で飲み込むもんだ。 知ってるかな、そういう女の深さを。いや深さというより、これは女のね、美しくも苦い味というもんだ。 そのアンナ・カレーニンが死を選ぶんだね」。 ・・・ ・・・ (ドストエフスキーの批評)「文学作品として完璧なものである」。 またそれにつづけて「現代ヨーロッパ文学のなかには比肩するものがない」とさえ言い切った。 トーマス・マンすら唸ったようだ、「全体の構図も細部の仕上げも、一点の非の打ちどころがない」。 こんな絶賛はめったにありえない。