東京へもどって『週刊新潮』を読みだしてちょっと驚いた。佐野真一の旧満州物語が始まったのだが、連載の第一回にでてきたのが伊達宗義氏なのだ。 要は「伊達宗嗣」なる詐欺師にいかに伊達家が迷惑を蒙ったか、について。伊達宗嗣は後年、スパイ事件で逮捕され、保釈後、杳として行方がしれない。かれは「伊達嫡流・順之介の御落胤」だとなのって方々で詐欺を働いた。伊達家とは縁もゆかりもない男である。偶然、伊達宗義氏は檀一雄氏の居宅で、この詐欺男に二回あった。先方はバツの悪そうにこそこそと逃げ出した(「宗嗣」も本名ではないらしい)。  実は、小生も、この詐欺男に二回あっている。初回は30年近く前、だれかのパーティが麻布で開かれたとき中丸薫やガブリエル中森(四月に急逝)に混ざって参加しており、誰かに紹介された。わたしが伊達政之と親しいというと、話を逸らしいつの間にか消えていた。  二回目も誰か著名人のパーティに紛れ込んでいた。目が合うとさっと他の人の流れにのって会場の隅へ移動していくのがみえた。 かれのスパイ事件発覚逮捕はその直後だった。 かくして宇和島といえば直線で結びつくのは伊達家だが、思わぬ詐欺男のはなしまで書いてしまった。