バウハウスについてはいくらでも書きたいことがあるが、禁欲しておく。クレーがモホリ・ナギやオスカー・シュレンマーやオットー・ファイニンガーやヨハネス・イッテンと教員室で数年間にわたって一緒になって青年青女のために努力と勢力を傾注していたことは、その現代デザイン史上の僥倖をいくら強調しても、強調しきれない。これも日記に書いてあるのだが、クレーはもともと「形態の学校」を熱く想像していたのだった!  ということでバウハウスについては省くことにして、それでは核心のところに入っていくが、クレーがそのバウハウスで方法の魂を傾けたこととは、造形(フォルム)にとって最も重要なこととは、「分節」ということなのである。アーティキュレーションだ。  第1032夜にのべておいたように、アーティキュレーションとはバロック期までの声楽および器楽のための音楽用語でもある。むろん言語学用語でもあって、かつて言葉と音楽が蜜月的照応関係をもっていたころ、アーティキュレーションはすべての表現の鍵を担っていた。クレーはそれを持ち出した。