◎週間カウントダウン:2004年3月21-27日

Q
http://homepage2.nifty.com/INCDclub/2004/20040327.htm
◆イスラエルがハマス指導者暗殺(22日)☆
・イスラエル軍は22日、ガザでハマス創始者で精神的指導者のヤシン師を暗殺した。
ハマスはイスラエルに対する全面戦争を宣言。シャロン首相を標的にするとも明言した。
・ヤシン師の後継者には、強硬派のランティシ氏を指名した。
・イスラエルへの批判は全アラブに拡大。アナン国連事務総長やEUもイスラエルを非難した。
・しかし、ブッシュ米大統領は「テロへの自衛権」に理解を示した。
・従来自制してきた一線を越えたとの見方が一般的。当面情勢の悪化は避けられない。
◆EUがマイクロソフトに巨額制裁(24日)☆
・欧州委員会は24日、米マイクロソフトに対し4億9750億ユーロ(650億円)の制裁金を命じた。
・OS「ウィンドウズ」の独占的地位を乱用し、EU競争法に違反したとの判断。
・OSと音楽・映像再生ソフトとの分離出荷などの是正措置も求めた。
マイクロソフトは決定を不服として提訴すると表明した。
◆英首相がリビア訪問(25日)☆(世)
・ブレア英首相がリビアを訪問し、最高指導者カダフィ大佐と会談した。
・英国首相のリビア訪問は、1951年の同国独立以来、初めて。
リビアの本格的な国際社会復帰への第一歩となった。
・ブレア首相によると、テロとの戦いにも全面的な協力で一致した。
・シェルはリビア国営石油会社と油田開発の長期提携で合意した。
◆アラブ首脳会議、急遽延期(27日)☆(世)
・29日開催予定のアラブ連盟首脳会議が27日夜、急遽延期になった。
・議長国のチュニジアが発表。延期と説明するが事実上の中止。
アラブ諸国の政治改革の推進方法で調整がつかなかった。
パレスチナ問題でも、対イスラエル強硬派のシリアと穏健派のエジプトなどが対立した。
アラブ諸国の深刻な対立と、政治改革、パレスチナ問題で展望の開けない現状を浮き彫りにした。
・前回会議でもイラク攻撃を巡り、リビアとサウジなどが対立。リビアの脱退問題に発展した。
アラブ連盟は21カ国1機構が加盟している。
◆マレーシア総選挙、与党圧勝(21日)
・マレーシア総選挙(下院219議席)が実施され、与党連合、国民戦線が議席の9割弱を獲得。
・昨年秋就任のアブドラ首相は、政権基盤を固めた。
・マレーシアは名実共に、ポスト・マハティール時代に移った。
◎寸評: of the Week
 【世界の構図】 ヤシン師殺害という予想外のニュースが世界を驚かせた。前々週のスペイン列車テロ、前週のスペイン総選挙に続く重要ニュース。テロで、民意で、そして軍事作戦で世界の構図が変わっていることを実感させる。
 【超えた一線】 ヤシン師の殺害は、また1つタブーが破られたという印象。パレスチナ問題の自制が失われ、「悪循環」(Vicious circle)が加速するのは避けられそうもない。 
 ヤシン師はハマスの創始者で、精神的支柱。ハマスには過激派テロ集団の側面がある一方で、パレスチナ社会では恵まれない人々を救済する社会福祉システムの意味がある。イスラエルはヤシン師を「テロリストのリーダー」と決め付けるが、パレスチナ住民にとっての意味合いは全く違う。
 イスラエル国内にも、ヤシン師殺害は「パレスチナの抵抗の日に油を注ぎ、かえって状況を悪化させる」という意見があった。シャロン政権はそれを承知で、殺害を決断した。強硬策が優先し、これまで働いていた自制が次々に失われていく構図だ。
 国際社会の反応は、ほぼ予想通りだった。アラブ社会やEU、国連のアナン事務総長はイスラエルを強く批判。しかしアメリカはイスラエルの立場に理解を示し、国連安保理のイスラエル批判決議にも拒否権を行使した。
 米国による仲介も、11月の大統領選までは働きそうもない。シャロン政権の強硬策に歯止めをかける要因は、当面見当たらない。
 これまで何度か噂話として上がったアラファト議長暗殺も、「まさかできないだろう」と高をくくっているだけでは済まなくなった気がする。
 【台湾社会の亀裂】 総統選後の台湾の混乱は益々拡大。事態は野党支援者と機動隊の衝突に発展した。伝わってくる映像画面は、暴動さながら。予想以上に深刻な台湾社会の亀裂は、今後の中台関係、東アジア情勢を見る時、欠かせない視点であることを再認識させる。
◎今週の注目(2004年3月28日-4月3日)
・31日にOPEC総会。原油価格は90年の湾岸戦争時以来の高水準にある。どんな決定があるか。
・4月初旬に、恒例の米USTRの外国貿易障壁報告書が発表される。WTOのラウンド交渉再開、大統領選など、通商問題への注目がまた高まる時期。米国が他国にどんなイチャモンをつけるかも興味深い。
・中東欧など7カ国が29日、NATOに加盟する。第2次東方拡大で、NATOは26カ国体制に。
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